●お元気でいらっしゃいますか? 2003年こそ平和と景気の回復を願っておりましたが、とうとう 戦が始まってしまいました。戦火をくぐり抜けた経験を持つ者にと ってはいたたまれない気分です。1日も早い終戦をと念じておりま す。ご家族・ご親戚などで関係の地域でお仕事をされている方がお いででは…。 こうしてお便りが出来る平穏な暮らしがどれだけ幸せかを思い知ら されております。 前へ向いて挑戦することを忘れず周囲の方々に感謝しながら今年度 も歩きます。どうぞよろしくお願い致します。 ●食と農 過日東京で行われたWTO総会で食糧輸出国は完全自由貿易をにらん で関税の大幅引き下げを主張し、一方輸入国では食糧自給は一国の 安全保障と国土の環境保全に関わる主権の問題と位置づけて議論は かみ合わずに閉会となりました。 デフレの真っ只中、安く食糧が手に入りさえすればそれでよいので しょうか。輸入で日本の農業は壊滅的打撃を受けつつあります。自 然環境調節機能は早晩失われると思われます。食糧の自給なくして 真の独立と平和な未来が語れるのでしょうか。 先般私達は「食べるな危険」(日本子孫基金著)という本を読みま した。輸入食糧の危険性について勉強しました。 昨年はBSE禍や無認可危険農薬使用の農産物産地偽証等々、食品の不 安・不信問題が続発しました。飽食時代に悪乗りした一部の人の責 任でしょうか。人と自然との調和・人生と食について西欧では深く て長い歴史の中で育った自国の農業への安全と信頼さらに100% 近い食糧自給率など堅実さが備わっています。 私達はこのような機会を教訓として賢い消費者の皆さんと新しい農 業者が連携し合って日本の農業を振興しなければならないと思います。 ●昨年の反省 昨年は早春から高温少雨傾向で成熟期を迎えました。ぶどうに病気 は少なく、減農薬栽培をしている私にとって大変プラスとなり助か りました。しかし、高温多日照で葉からと土の表面からの蒸散作用 とで水分を大量に消耗したために土中の水不足が生じました。その ため果実が肥大しにくくなり粒が大きくならなかった房が出来てし まいました。さらに果皮が少し硬く感じられいくら甘くてもご期待 を裏切ったなぁと反省しています。 ●今年の抱負 @土作り・木作り 完全有機栽培。昨秋10アールに3トンの完熟牛糞堆肥で土作りを しています。健全な根が張ると健康な木になり良い実が稔ります。 天候や気象の変化にも負けない木、病虫害の発生に抵抗力のある木 に育てることを目指します。 A減農薬栽培 完全無農薬栽培になるには未だ夢の夢… 今年も基本防除を発芽から開花までに2回、幼果期から袋掛け前ま でに2回、計4回で終わりたいと思います。一般の農家に比べると かなりの減農薬です。そのために病害虫の発生しにくい環境に整備 した雨よけハウス栽培とし、周囲には防虫ネットで被覆、更に果房 には袋をかけて保護します。 B美味しさの追求 人為的な管理を避けて可能な限り木の自然の生理生態を尊重した管 理をします。各々の品種の備えている能力を最高に発揮させるよう に枝葉の管理や果実の管理を周到にします。 C出荷時期 出来るだけ早い時期に出荷できるといいのですが、本当に美味しく ならないと…味の関係でお約束はできにくいところです。 ●今抱えている問題 @単価と生産コスト 我が家の長年の夢だった「珍しい世界のぶどう詰め合わせ」は、4 品種から5品種を一房ずつ入れています。これを2品種詰めにする と時間短縮・コスト削減になるのですが、意外に人気がありやめら れません。 他の農家も真似し始めました。負けてたまるかと思う気持ちもあり ます。 A新設ぶどう園の水不足 やっと念願のハウスが完成しました。潅水施設も整いました。地下 60メートルボーリングしましたが、毎分30リットルぐらいしか 得られず思案しています。 通常11月から3月は、月に2回、4月と10月は3回、5月から 9月は5回ぐらい潅水が必要です。一回の潅水量は10アール当た り約30トン必要です。 B農薬散布を巡って 減農薬栽培。それは農薬の散布回数を減らす事と一回に使う量を少 なくし、散布する私にかかる農薬も少なくする事です。そのために は自動ハウススプレーが有効ですが、見積もりを取るとかなりの額 でした。悩みは尽きません。 ●「育種賞」をいただきました 個人で地道に研究を続けている人達が集う「全国新品種育成者の会」 という会があります(創立16年目)。そしてその会の人々にもっと 光を当てようと奔走してくださっている方がおられます。 新しいぶどうを7品種も登録を取り、40年近く頑張って来た主人 に目を見張って下さった方があり、第9回目の育種賞の授賞となり ました。会員50名ほどの小さな会ですが、この道一筋に歩んで来 た主人にとっては大変嬉しい賞となりました。 授賞者の謝辞を述べた主人が最後に「このような席に初めて家内を 連れて来ることが出来て人生で一番嬉しい日となりました。長い間 支えてくれた家内にお礼を言います!」と…。 そのひとことに農林水産種苗課の会議室で出席者の皆さんから拍手 が湧きました。思いがけない言葉に驚いたのは言うまでもありませ ん。参加者の方々から 「私は賞をもらった時には家内を亡くしとったから連れて来れんじゃ った。あんた達は幸せじゃなあ!」と喜寿を迎えたとは思えない方 のひと言、そしてまた 「家内は身体が弱く連れて来られんかった」とつぶやかれた方。 若い方々からはぶどうを食べたいとかぶどう園を訪れたいと声がか かりました。 瀬戸へ居を構えてから今日までずっと私達を陰に陽に応援して下さ った数多くの皆さんに感謝しながら会場を後にしました。 今年のご案内状は7月に発送いたします。どうぞよろしくお願いします。 続き(第16号)を読む 前(第14号)へ戻る 第15号PDF形式