6月〜7月の研究所だより
6〜7月は都合で止むなく休ませていただき ました。遅れましたが、やっとこの間の主な経過、管理など簡単にまとめましたのでお知らせします。
経過
今年は春の低温で自然界の植物同様 ぶどうもスタートから遅れました。5月になってようやく一斉に活動が始まったため、その後の管理作業が重複し、多忙を 極めました。全国的に低温、日照不足の傾向が続きました。梅雨期の豪雨など不安定な気象のもとに、ぶどうも一時どうなる かと心配されました。

しかし、岡山は梅雨が早く終わり、その後一転した好天に恵まれ、生育の遅れも少しずつ回復しています。 着色品種は早生は6月末〜7月上旬頃より、例年通りの着色を始めました。

(左:順調に生長している瀬戸ジャイアンツ、7月上旬)
管理・作業内容
1.摘心
5月と同様続きます。一回摘心すれば、各節から子蔓(側芽)が伸びるため、放置するとその伸長で、開花結実に使う養分が 不足します。そのため、子蔓は、2〜1枚葉を着けて摘心。以下、孫蔓(側芽枝の側芽)などは次々、出しだいに摘み取ります。樹勢 が強いと収穫期まで続けます。葉数では、本梢10枚側芽計20枚、1本の枝で約30〜35枚あれば十分で、それ以上は葉が重なり、 光合成の効率が劣り、ひいては、おいしいブドウづくりの妨げになります。

(左:摘心についての学習中)

2.花穂整形
今年は、春が遅れたため、6月上旬に作業が集中しました。この作業は、早く始めると大きな房を小さくするため、枝が 伸びようとする力と花穂の発達に引き込む力のバランスが崩れて、枝が勝つため、開花約1週間〜直前が適当です。


(左:花穂の整形作業)
品種名 ジベレリン
濃度(ppm)
処理期、その他
瀬戸ジャイアンツ 16〜17 1房が完全に咲き終わった当日〜3日以内の夕方
早く、また、蕾が混じっていると下辺が曲がり、遅くなるとタネを生じる
フルメットは1回目には入れない。入れるなら2回目に1.0〜1.5ppm
皮が硬くなり、食味低下の恐れあり。
マスカット・ディユーク・アモーレ 16〜17 1房の1/3以上の開花中(1回目)
フルメットは2回目に3ppm、ジベに混合
発芽〜展葉初期(5〜6枚)の頃、アグリマイシン1,000倍液を花穂に散布しておく
ハイベリー 12.5〜17 満開直後(1回目)、遅れてもタネは生じない
2回目フルメット2〜3ppm加えると大粒化容易
3.タネナシ化処理(ジベレリン処理)
ジベレリンと呼ぶ植物成長ホルモン剤の水溶液を作り、開花中〜開花直後の房を浸します。更に、10〜15日後に同様の処理をします。1回目 はタネナシ化のため、2回目は果粒肥大を促すためです。

品種によって無核化(タネナシ化)できないものもあり、また、ジベレリンの濃度や処理の適期がそれぞれ異なり、当研究所では品種数が多いため、 無核化できない品種も沢山あります。(主な品種の例を左表に記します。)


(上:垣根仕立ての摘粒作業風景)
4.摘粒(粒まびき)
最も手間のかかる技術を要する作業で、ジベ処理直後から7月中旬までかかりました。小豆〜大豆粒の頃、その房の形や1粒の大きさ を想定し、不要な粒を摘み取る作業です。この時期は3日間も見ないと驚くほど成長し、作業が遅れると摘粒ハサミの使用が困難 になり、1房の作業時間も長くなります。

理想はジベ処理1回目と2回目の間に終えたいのですが、春以降の温度管理や水管理、摘心、病害虫対策など摘粒だけに集中できない 管理が重なるため、摘粒が長期に及びました。摘粒1房、早ければ2分以内が、適期以降になるとほど長く20分もかかる場合がありました。
5.その他の管理
ア)温度調節−5月以降にハウスの窓を全面開放して、自然に戻しますが、今年は雨天が多く、開け閉めに悩まされました。

イ)灌水−毎日少量をしていますが、梅雨明け後は毎朝約5〜6mm潅水しています。

お便り(千客万来)の作成・発送
お陰さまでお便り30号 発送が終了。1年に2回の発行ですが、既に15年目を迎えました。夏休みに入った殆どのバイトさんが出勤できないとあって 心配でしたが、今年も梅雨明け後のぶどうの出来具合を確かめて、自信が持ててから作成し、24日に完成して発送しました。 とにかくここまで続けられたことに喜びを隠せません。ご指導、ご協力くださいました方々にこころから感謝申し上げます。(下の写真は発送風景)。
その際、問題となった事項について以下に記します。
1.価格
今ネットやデパートの価格が約2倍以上、公設青果卸価格も約60〜30%高(7/20現在)でした。これらの品質や安全性などは?当 研究所では、化学肥料は一切使わず、農薬も慣行の1/2以下の減農薬に徹した作りです。僅かでも値上げしたいと考えていましたが、 千客万来発行15周年を記念し、皆様に感謝を込めて、価格を据え置くことにしました。

(上:箱詰用の箱の準備)
2.出荷体制
一般に、商品を注文すれば即届く時代です。「まだか、まだか」の問い合わせが沢山あります。当研究所も一日も早く お届けしたいと可能な限りの努力をしていますが、実現できていません。日々の出荷量は早朝から、収穫〜搬入〜選果調整 〜箱詰〜荷作り〜伝票確認記録〜発送と全て手作業です。熟練者でも、青果物の扱いは難しく、慎重を要するため、一日の 集荷量には限界があります。また、事務量も多く、慎重に現場と台帳の照合が必要です。機械化可能な作業が少なく、 素人に依頼する訳にも行かず、商品の種類を単純にすれば消費者ニーズを狭めることになります。観光農園として、全量の摘み取り、 お持ち帰り的になれば、畑や樹が傷む心配もあり、悩みの種です。

3.テスト販売
「農業技術の匠」に認定されたのを 機に、少量詰め合わせパック「匠味探訪」を新しくブランド化することで、 赤磐商工会 のご支援を戴き、今期テス ト販売することになりました。どんな内容に仕上げるか研究中です。(1箱6パック詰め\6,000)
トピックス
4月からの反省会と福井さんの誕生会、利江さんの歓迎会を開催しました(左写真)。

福井さん、誕生日おめでとうございます!

利江さん、恵子の代役よろしくおねがいします!

反省会では、皆さんお一人お一人が、違った観点から作業の問題点について     意見を出してくださって、とってもいい会になりました。ブドウの事は勿論ですが     高齢者2人をいたわる皆さんのお気持ちが伝わって嬉しい有難い会でした。